クラシックの曲を自分で演奏したのに、著作権侵害!?

噂には聞いていたが、「クラシックの曲を自分で演奏したのに、著作権に引っ掛かり削除される」問題、サウンドクラウドで僕もやられた!

 

初めそういう話を聞いた時、楽譜出版社の権利について、日本音楽著作権協会から訴えられるということだと思った。

実際、そういう訴えが近年増えており、それに対する憤りと闘争の意志を述べたブログが多数見られる。

が、それは聴衆から入場料を取って演奏する、有料コンサートの話だ。つまり、営利目的の演奏の場合の問題である。

 

また、別の問題として、「クラシックだから著作権は切れている」と思い込んでいたが、実はまだ作曲者の死後70年(日本では50年だが、欧米は70年なのだ)が経過していなかった、ということもある。

例えば、映画「2001年宇宙の旅」のテーマ曲として有名な、交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」は、クラシックのアルバムに収録されており、クラシック作品として広く認識されているが、作曲者のリヒャルト・ゲオルク・シュトラウスの死没は1949年9月8日なので、来年の9月8日まで著作権は生きているのだ!

 

しかし、ネットの配信サイトに動画・音声をアップした場合、また別の問題もあるらしいのだ。

楽曲を投稿すると、自動で照合が行われ、過去の誰かの演奏の録音物と同一であると判断され、録音物の著作権を侵害するとして、削除されたり表示されなかったりすることがあるというのだ。

 

それについて書かれた代表的なブログが、これだ。

ameblo.jp

動画配信の著作権について | ♡ピアニスト にとまいこのハッピー音楽ライフ♡

これは YouTube での、ピアノを実際に演奏した動画の削除事例が書かれたブログだ。

 

 

以上のことを踏まえて、今回の僕の事例について書こう。

 

僕が20年以上前に MIDI 鍵盤で弾いて Mac に取り込み、その後時間を掛けて緻密にエディットした、ベートーヴェンピアノソナタ《悲愴》ファイルを、先日発掘した。

それを少し手直しした上で、ソフトウェアサンプラー付属のピアノ音源で鳴らして、3つの楽章別に MP3 ファイルを作った。

そして、サウンドクラウドに、まず第1楽章、数時間おいて日付が変わってから第2楽章をアップし、さらにその翌日、最後の第3楽章をアップし、それらをプレイリストにまとめたのだ。

(一度にアップしなかったのは、アップする度にトピックの一番上に表示されるので、小出しにした方が人目に付きやすいと思ったからだ(笑))

 

ところが、第3楽章だけプレイリストに入らないし、演奏時間が 0:00 と表示されているので、おかしいなと思っていたところ、こんな通知が来た。

 

【原文】

SoundCloud
Hi 宮崎昭治,

It looks like your track

"Beethoven: Sonata for Piano No.8 in C minor op.13 "Grande Sonate pathétique" III Rondo, Allegro(MIDI using UVI "F Grand 278")"

might contain or be a copy of "Piano Sonata No. 8 in C Minor, Op. 13, "Pathetique": III. Rondo. Allegro" by Llyr Williams, which is owned by owned by Signum Records in certain territories.

As a result, your track has been removed from your profile for the time being.

– Wait SoundCloud, I think I have the rights to this!

If you think we've made a mistake, you can tell us about it by following the link below and filing a dispute. You can file a dispute if:

• we've wrongly identified the track
• we've correctly identified the track, but you have the rights to post this to SoundCloud - for example, because you are the copyright owner or have permission from the copyright owner(s).

If either of these things apply to you, tell us about it here:
copyright.soundcloud.com/dispute/soun…tes:≪受付番号は削除≫

To learn more about copyright, please visit our copyright information page: soundcloud.com/pages/copyright.

Thank you,
The SoundCloud Copyright team

 

 

誰だかの演奏のコピーだとか著作権がどうのこうの言っているのはわかる(笑)が、僕の英語能力ではこういう法律がらみの文章は手に負えないので、Web で翻訳してみた。

 

Weblio 翻訳による訳文】

機械翻訳の結果

SoundCloud
宮崎昭治でやああります、

それは、あなたのトラックのように見えます

「ベートーベン:アレグロで(UVI「Fグランド278」を用いたMIDI)、ハ短調op.13「グランデSonate pathétique」IIIロンドの中のピアノNo.8のためのソナタ

「Cマイナー、作品13、「崇高」のピアノSonata No.8」を含むかもしれないか、コピーであるかもしれません:III。ロンド。リリュル・ウィリアムズ(特定の領土でSignum Recordsによって所有されるものによって所有されます)によるアレグロの楽章」。

この結果を受けて、あなたのトラックは、しばらくの間あなたのプロフィールから取り除かれました。

SoundCloudを待ってください、私には、これに対する権利がありますように思います。

我々が間違いをしたと思うならば、あなたは下のリンクに従って、論争を起こすことによって我々にそれについて話すことができます。
あなたは、以下の場合論争を起こすことができます

• 我々は、トラックを誤って特定しました
• 我々はトラックを正しく特定しました、しかし、SoundCloud ― たとえば、著作権者であるか、著作権者から許可があるから ― にこれを郵送する権利が、あなたにはあります。

これらのどちらでもあなたに申し込むならば、我々にそれについてここで話してください:
copyright.soundcloud.com/論争/soun…シ:≪受付番号は削除≫

著作権に関する詳細は、我々の著作権情報ページでご覧ください。
soundcloud.com/ページ/著作権

ありがとう、SoundCloud Copyrightチーム

 

素晴らしい翻訳だ!(笑)

「宮崎昭治でやああります、」って、一体……?(^^;

 

Hi ○○,

なんていう、文書の冒頭で必ず使う言い回しぐらい、まともに訳せないのか?……と、初めから不安にはなるが(笑)、要するに、

 

・「ルアー・ウィリアムズ(自動翻訳では、リリュルになっている)の演奏のコピ(全て、または一部)だ」と内容識別システム(content identification system)で判断されたので、表示を保留した。(削除はしていない)

・この判断は、間違いかも知れない。

・自分のオリジナルであるか、コピーである場合は自分が著作権保有する、または著作権保有者の許可を得ていることを示せるなら、この措置に抗議することができる。

・抗議する場合、フォームが用意してあるので、そこから申し込める。

 

……ということだ。

 

まあ、一流のピアニストの演奏に酷似しているなんて、光栄ではあるが…。(^^;

 

しかし、これは紛れもなく僕のオリジナル演奏だ!

国内外4社の出版会社の楽譜を精読・吟味し、ドイツ人2人、オーストリア人1人のベートーヴェン弾きとして著名なピアニストの演奏を聴き込み(その内の1人のテレビの講座を録画して、繰り返し観て)、比較検討して自分なりに解釈した上で、最もベートーヴェンの遺志に近いと判断した版をコピーしたものに、鉛筆で多数の書き込みをして、弾いてエディットしたのだ…だからこそ、自信を持ってアップしたのだ!

 

だから、あくまで抗議するとにした。それに、第1楽章・第2楽章がアップされたのに、シメの第3楽章が聴いてもらえないのは、悔しすぎる!😭

 

そこでフォームのページに進むと、

①すべて私自身の仕事(または私が代表する誰かの仕事)です。

②他の誰かの曲の私のバージョン(すなわちカバーバージョン、または、リミックス)です。

③私の創造ですが、私は他のアーティスト(すなわちDJ混合物、マッシュアップ、ラジオ番組またはポッドキャスト)から、トラックを使いました。完全に、他の誰かの創造です。

……の3つ(便宜上、番号を付けた)から選ぶように求められたので、①を選んだ(後で考えてみると、作曲はベートーヴェンなのだから、②が正しかったか……? それとも、「他の誰か」とは「著作権保有する人」のことを指すとみなすとすれば、①でいいのか? まあ、②としておいて、作曲者の没後70年以上経過していることを示せば、正確だったろう)。

 

そして、このファイルがオリジナルであることを示す根拠や、著作権許諾の文書があるかなどを書くように求められた。

とてもそんなことを英語で書けないので、


I am not very good at English, so I would like to write in Japanese.

(英語が苦手なので、日本語で書きます)

 

と1行目に書き、

 

・最終更新2000年の記録が残る元の MIDI ファイルを持っている。

・前日と前々日の2日間を掛けてそれを手直しした MIDI ファイルも持っている。

・それらを証拠として提出することができる。

・ピアノ音源は MOTU 社が販売するソフトウェアサンプラー MachFive 3 に付属する「F Grand 278」を使用しており、これは UVI 社が販売する同名商品と同一音源である。

・私は全く同じ演奏を違う音源で鳴らし、それも証拠として提出することができる。

 

……だから、オリジナル演奏だと証明できると、日本語で(笑)抗議してみた。

スタッフの中に日本語がわかる人はいるだろう、もしいなくても、何かしらの手段で翻訳するだろう。

下手な英語で却って誤解を招くようなことを書くと、法律に絡む問題なので、余計面倒なことになると思ったのだ。

 

その下は連絡先を記入、さらに何か3つの確認事項(記録に残しそびれた💦が、「主張に虚偽が認められた場合、アカウントが削除されることがあるということに同意する」とか、そういう内容だった)にチェックを入れ、送信。

アメリカ在住の人はアメリカの法廷、それ以外の人はドイツ法廷……」など、怖いことも書いてあったが(笑)、気にしない。

だいたい、内容識別システムで「似ている」と判断されたけれど、人間が聴き比べれば、すぐに違うことがわかるはずだ。そのルアー・ウィリアムズの演奏を聴いてないが、絶対違うに決まっている。「ドイツの法廷に出頭しなさい」なんてことにはなるわけがない。

 

送信すると、


This dispute is currently under review.
Dispute filed on 13 Jun 2018

(現在チェック中です。
論争は、2018年6月13日にファイルしました)

 

と、メッセージが出た。もちろん自動だ。

 

さて、どうなることか……。 

 

 

そして翌日。

 

サウンドクラウドからメッセージが来ていた。

 

【原文】

SoundCloud
Hi 宮崎昭治,

Thank you for providing information relating to the removal of your track:

Beethoven: Sonata for Piano No.8 in C minor op.13 "Grande Sonate pathétique" III Rondo, Allegro(MIDI using UVI "F Grand 278")

宮崎昭治
Beethoven: Sonata for Piano No.8 in C minor op.13 "Grande Sonate pathétique" III Rondo, Allegro(MIDI using UVI "F Grand 278")
Posted 21 hours ago21 hours

Good news! We've reinstated this track to your account.

We're constantly working on making our copyright processes better, but mistakes do sometimes occur. Thank you for your patience as we looked into things, and apologies for any inconvenience caused.

Thank you,
The SoundCloud Copyright Team

 

 

Weblio 翻訳による訳文】

機械翻訳の結果

SoundCloud
宮崎昭治でやああります、

あなたのトラックの除去に関して情報を提供してくれてありがとう:

ベートーベン:アレグロで(UVI「Fグランド278」を用いたMIDI)、ハ短調op.13「グランデSonate pathétique」IIIロンドの中のピアノNo.8のためのソナタ

宮崎昭治
ベートーベン:ハ短調op.13「グランデSonate pathétique」III Rondo(Allegro(UVI「Fグランド278」を用いたMIDI)Posted 21時間のago21時間)のPiano No.8のためのソナタ

よい知らせ!
我々は、あなたの口座にこのトラックを復帰させました。

我々は著作権プロセスを果たすことに絶えず取り組んでいます、しかし、間違いは時々起こります。
我々がものを調べたので、あなたの忍耐をありがとう、そして、どんな不便についての謝罪でも引き起こされます。

ありがとう、SoundCloud著作権チーム

 

サウンドクラウドは日本語に対応していないが、日本語で抗議しても、ちゃんと伝わるものだ。

無事 著作権侵害の容疑(笑)は晴れ、音声ファイルは復活した。

しかも、冒頭に挙げた YouTube 事例では、「返答は1ヶ月以内」ということだが、サウンドクラウドは24時間以内の対応だった!👍

謝罪もすると言っているが、この素早い対応には感謝したいくらいだ。

 

サウンドクラウドのサイトやスマホアプリでは返信はできないが、同じ文面のGメールが届いていたので、Weblio で英訳した(笑)メッセージを返信しておいた。

 

Hi The SoundCloud team,

I thank for your quick correspondence.

Please do your best for development of the music and the joy of people of the world from now on.

 

Thanks,

Shoji Miyazaki

 

(The SoundCloud team 様

素早い対応、ありがとうございます。

これからも音楽の発展と、世界中の人々の喜びのために頑張ってください。

 

感謝を込めて、

宮崎昭治)

 

では、その一流ピアニスト並みの打ち込み演奏(笑)、ベートーヴェンピアノソナタ《悲愴》をお聴きいただきたい。

(全3楽章、演奏時間20分01秒)

soundcloud.com

 

今回の場合は MIDI 打ち込みだから元データを証拠にすることができるが、ちゃんと演奏して録音・録画した場合は、曲の前に「○○さ~ん、じゃあ録ってみましょう!」「はーい、お願いします」、一人の場合は「よっこいしょっと、じゃあ録りま~す」などの声をわざと録っておき(笑)、切り取ってアップしても、編集前のデータを残しておけば、いざという時の証拠になるだろう。

(冒頭の にとさんの動画は、挨拶もカメラの録画・停止ボタンを押すところも無編集で入っているので、証拠になりやすいはずだ)

 

著作権侵害の警告を恐れて、クラシック奏者・唱者の素晴らしい才能が世に出ないのは、もったいない話だ。

このブログの事例を参考にしていただき、少しでも多くのクラシック作品が、少しでも多くの人、いや、世界中の人々に聴いてもらい、楽しんでもらえるようになれば、幸いである。

 

(6/22追記……22年前に打ち込みで作ったチャイコフスキー交響曲《悲愴》に動画を付けて YouTube にアップしたところ、これにも既発のCDのコピーだと自動認識システムで判断され、著作(録音)権侵害の申し立てが来た。YouTube の場合は、表示されるが広告が出て、その収益が著作権者に支払われるシステムなので、放置しても構わないのだが、自分のオリジナル音源で他人が儲かるのは癪だから(笑)抗議申し立てをした。そして、自分の打ち込み技術にますます自信を付けたのだった(笑))

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