エレキベース購入にまつわる思い出
持っているギターやベースを、この頃使うたびに写真を撮っていたので、ここで順次紹介していこうと思う。
まずはベース。
学生時代に大枚叩いて買った、フェンダーUSAのプレシジョン・ベース('78年製)
去年、13年ぶりに引っ張り出してきたのに、ちゃんと音が出るし、ガリノイズもないし、チューニングも完璧に合ったまま(おい!💦)、それなのにネックも反ってない!
ネジやら何やら錆びているが、全然問題なく使える!😃
そこで思い出したのは、もう30年も前の話……。
音楽関係の専門学校時代、ベース科の同級生が、ベースを買いたいがいい店を知らないかと訊くので、御茶ノ水なら楽器屋がいっぱいあると教えたが、御茶ノ水は行ったことがないから案内してほしい(彼は地方から出てきたので)、と頼まれ、同行することになった。
僕もそれまで使っていたベースの音が重低音不足で、高音部のフレットの位置が少しおかしくピッチが狂っている、という不満を持っていたので、ついでに物色できれば、とは思っていたのだが……。
JR御茶ノ水駅から近い順に楽器店に入り、2人で物色したが、彼は「う~ん」「なかなか……」と言っては店を出る。(笑)
やがて谷口楽器の前に来たので、「ちょっとゴメン」と言って入った。
谷口楽器は知る人ぞ知るレフティの聖地であり、持っていたベースもエレキギターもそこで(どちらも5万円台)買ったし、のちにエレキギターをもう1本、マーティンのバックパッカー、クラシックギターも買い、非常にお世話になっている楽器店だ。
しかし、欲しいと思っていたフェンダーUSAのプレシジョンはなかった。
その日店頭に並んでいたのは、いろいろなエントリーモデルとフェンダージャパンやUSAのジャズベース、そしてリッケンバッカーだった。
リッケンバッカーは、実はあこがれのベースであった。
ポールのリッケンバッカー・ベース4001S
言うまでもなく、リッケンバッカーはビートルズのポール・マッカートニーが中期以降使ったベースで、特にホワイトアルバム(正式タイトルは「The Beatles」)でのリッケンバッカーの特色を生かした音が大好きなのだ。
↑改行が多いわけではない、こういうジャケットだ。(笑)
特にしびれるのが、「While My Guitar Gently Weeps」だ。
しかし、どんなに音が好きでも、僕がリッケンバッカーを持ったら、みんな何と言うだろうか?
そもそも、全然違う真っ赤なベースを持ってても、「あ、ポールだ!」と言われてしまうのだ!(笑)
まあ、僕が中学時代、ギターを挫折しかけたところを救ってくれたのはポールだが……。(その辺の詳しい話は、一体いつになるか皆目見当も付かないが、「僕の音楽ルーツ(その15)」あたりに書く予定だ(笑))
そして高校でバンドを組んで、不本意ながらベースに転じた(ありがち💦)時、ベースの面白さ、奥の深さを教えてくれたのもポールだ。もちろんソングライティング、ボーカル、アレンジなど、様々なことを教わり(もちろん直接ではない)、尊敬している。
でも、ベースを持ってステージに出た瞬間、「あ、ポールだ!」と言われたくない。尊敬するしないは別の話で、僕は僕なのだ! 決してポールの真似をしているわけではない!
だいたい、左利きだとエレキギターを持てば「ジミヘン」と言われ、アコギを持てば「松崎しげる」(笑)と言われる……しかもこのお二方は右用のギターを左に構えるのだが、それでもそう言われるなんて……。( ノД`)
ちょっと話はそれたが(笑)、とにかくポールと同じリッケンやヘフナーは死んでも買うものか、と思っていたのだ。(今でも思っている(笑))
で、フェンダーのジャズベースなら使っている人は多いから、「あ、○○だ」と言われることはなくていいんじゃないかと思うかも知れないが、あまりにも使う人が多いので、かえって敬遠してしまうのが僕の性格だ。(^^; (車も携帯電話もシンセも、業界シェア1位のメーカーは避ける傾向にある(笑))
ピックアップが2つあるから、音作りが多彩で、良い。だから使う人が多いのであるが……、やはり個性を出したい。
そこで、使っている人が少なくて、僕好みの音を出せるベースを探していたら、ホール&オーツの曲のベースが僕好みの音だと気付いた。
ホール&オーツの多くの曲のレコーディング、ライブツアーでベースを弾いていたのは、この人だ。
"T-Bone" Wolk のニックネームで知られるベーシストだ。残念ながら、2010年に58歳の若さでお亡くなりになっている。ご冥福をお祈りする。
音色だけでなく、彼の正確無比ながらもグルーヴを出すプレイには、しびれていた。しかも普通のロックプレイヤーよりもベースを高い位置に構えて弾く姿は、カッコ良かった。
ポールと違い、メロディアスなプレイはなく、オーソドックスなベースであったためか、一般にはあまり知られていない。今ネットで検索してみたが、日本人が彼のことを言及したページが非常に少ない。もっと評価されるべきベーシストだと思う。
彼はもっぱらプレシジョンベースを愛用していたが、その音を聴いた僕は、「僕の求めているベースサウンドは、これだ!」と思ったのだ。
それに、ベースの講師の方が授業中に「君のプレイには、プレべが合ってると思う。そんな安いベースではなく、ちゃんとしたUSAのオールドを探してみては?」と言ってくれたのも、後押しとなった。
……で、話は谷口楽器に戻るが、「また、日を改めて」と思いながら店を出て「こっから先は行ったことないけど(笑)」と白状しつつ、さらに神保町方面に向かいながら楽器店のハシゴを続けた。
同級生は物色を続けたが、「う~ん、なかなか……」と言うばかり。(笑)
いよいよ靖国通りまで来た。この先は書店街。その手前に、クロサワ楽器が。(記憶によると、当時は現在の位置ではなく、斜め向かいにあったはずだが……)
「あ、駅のすぐ近くにもあるのに、ここにもあるんだ。でっかいな! ここは期待できそうだね」と、最後の望みを賭けて入った。
同級生はかなり物色していたが、やはり「う~ん」(笑)
僕はレフティなんかあるわけないと思っているので、同級生のために物色し、「これ、どう?」「う~ん」「これいいんじゃない?」「いや~」(笑)
そして、1台のベースに目が留まり、「お、USAのプレべじゃん、いい感じ! これで左ならな~」と言いながら近付いたが、思わず目を疑ってそのボディーを何度も見た。
レフティだったのである!
「Fender USA Precision Bass LEFTY '78年製(中古品)」
と書かれた札がちゃんと付いていた。
すぐに店員さんを呼び、試奏させてもらった。
「これだ! これが俺の音だ!」とすぐ思った。
そして、「左利き用なんて、珍しいですね」と言うと、
「ええ、珍しいですね。たまたま……一昨日かな、入ったばかりなんです」
何という偶然! これより前に来ていたらなかったし、もっと後に来ていたら売れてしまったかもしれないのだ!
「'78年製だとオールドではないですよね。でもいい音しますね」
「はい、まだ10年そこそこなので、オールドではなく、ただの中古です(笑)。でもこれは非常に状態がいい、掘り出し物です。フェンダーUSAの製品はオールドよりもむしろ、'77~'78年の物の方が作りがしっかりしているので、お勧めですね。まあ、お勧めですけど、お財布とご相談していただいて、じっくり決めていただければ。……もうしばらく弾きながら考えてくださっていいですよ」
と言って店員さんは立ち去ろうとしたが、
「これ、買います!!」
22~23万円台だったと記憶しているが、学生には厳しい値段だった。それでも今後こんな良品にいつ巡り逢えるかわからない。即決した。
もちろん、現金で買えるわけはなく、未成年(当時19歳)なので親に電話して説得し、月々1万円程度になるよう24回払いのローンを組んだが……。
同級生は、「思い切ったね」と笑っていたが、結局彼は何も買わずじまいだった。(笑)
人の買い物に付き合うつもりが、自分がいい買い物をしてしまったわけだ。
しかし彼が僕に案内を頼んでくれなかったら、そしてそれがこの日でなかったら、さらに彼がこの日買いあぐねなかったら、このベースには出会えなかったはずだ。何しろ、上に書いた通り、谷口楽器には足繁く通ったが、その先、楽器店街最南端のこのクロサワ楽器は存在自体知らなかったのだ。
今は連絡が取れなくなってしまった彼は、おそらくこの日のことを忘れていると思うが、感謝したい。
それに、誰だか永遠に知ることはないだろうが、いいタイミングでいい物を手放してくれた前の所有者の方にも感謝したい。
そして、買ってから30年近く経ち、冒頭に書いたように、「作りがしっかりしている」という店員さんの言葉は間違いなかったと、改めて納得した次第である。
この一言がなかったら、「う~ん、オールドじゃないしな~」という迷いは消えず、買わなかったと思う。この店員さんにも感謝である。
(最近になって、ネットでこの店員さんの言葉を裏付ける記事を見付けたが、今ちょっと見当たらない💦)
13年間もしまいっぱなしで、ごめんね。これからはたっぷり活躍してもらうから、またよろしくね。
ちなみにそれまで使っていた Aria Pro II の真っ赤なベースは、フレットレス改造し、少しの間使っていたが、その後出番がなく実家に置きっ放しにしていたが、昨年の引っ越しの際、母が誤って処分してしまった。残念なことをした……。